2024.09/2

疾患における性差-がん

がんは、性別によって発症率や病態、予後に違いが見られる病気の一つです。性差ががんに与える影響は、ホルモン、遺伝的要因、生活習慣、社会的要因などが複雑に絡み合っています。これを理解することは、性別に応じた効果的な予防策や治療法の開発に繋がります。

今回はがんにおける性差についてご紹介します。


ホルモンによるがんへの影響

まず、性差が顕著に現れるがんとして、乳がんと前立腺がんが挙げられます。乳がんは圧倒的に女性に多く発症し、女性特有のホルモンであるエストロゲンがリスク因子として重要です。

特に、閉経後にエストロゲンが過剰に分泌されることが、乳がんの発症リスクを高めるとされています。男性にも乳がんは発症しますが、その割合は非常に低く、女性の1%未満です。

一方、前立腺がんは男性に特有のがんで、男性ホルモンであるテストステロンが関与しています。年齢と共に発症リスクが高まるため、高齢男性における主要な健康問題の一つです。

前立腺がんは、早期には無症状で進行が遅いため、多くの場合、定期的な検査が推奨されています。

習慣によるがんへの影響

肺がんや大腸がんのような性別に共通して発症するがんでも、性差が存在します。

例えば、喫煙が主要なリスク因子である肺がんは、長年にわたって男性に多く見られていましたが、女性の喫煙率が上昇するにつれて、女性の肺がん発症率も増加しています。

また、大腸がんでは、男性の方がややリスクが高いとされており、これは食生活や運動習慣の違いが影響している可能性があります。

さらに、がんの予後や治療反応にも性差が影響を与えます。女性は一般的にがんの治療に対する耐性が高く、男性よりも生存率が高い傾向にありますが、これもがんの種類やステージ、患者の年齢によって異なります。

がんにおける性差を理解することは、性別に応じた予防と治療のアプローチを最適化するために不可欠です。医療機関は、性差を考慮した診断・治療を提供することで、がんの予後をさらに改善することが期待されます。患者自身も性差に基づいた情報を活用し、適切な健康管理を行うことが重要です。


日本対がん協会のサイトでは性別による部位別の統計が掲載されているので、ぜひご参考下さい